お酒の飲み過ぎが原因となる身体の病気

お酒の飲み過ぎで、肝臓以外の消化器、神経、筋肉、循環器など全身のさまざまな臓器にも障害を引き起こす可能性があります。

消化器の病気:イラスト

消化器の病気

消化器の病気では、肝疾患が代表的です。常習的に大量の飲酒を続けると、まず脂肪肝を起こす可能性があります。脂肪肝の段階では自覚症状がなく、多くの場合は飲酒をやめれば肝臓の状態は良くなります。しかし、飲酒を続け、アルコール性肝炎やアルコール肝線維症になると、発熱や腹痛の自覚症状が出てきます。それでも飲酒を続けると肝障害の末期である肝硬変になる危険性があります。

また膵炎は、胆石や自己免疫疾患でも罹患しますが、飲酒によっても起こることが分かっています。膵炎には急性膵炎と慢性膵炎があり、急性膵炎では死亡につながることもあります。慢性膵炎では膵臓の線維化、消化酵素やホルモンの分泌低下がみられます。膵臓が分泌するホルモンの一種であるインスリン分泌の低下は、糖尿病の原因にもなるのです。

さらに、飲酒はほぼすべての消化管に悪影響を及ぼすため、胃食道逆流症、マロリーワイス症候群(激しい嘔吐を繰り返し食道と胃の境目付近が裂けて出血する)、急性胃粘膜病変、門脈圧亢進性胃炎、下痢、栄養などの吸収障害、痔核の原因にもなるのです。


循環器の病気

飲酒と関連する主な循環器の病気には、心筋梗塞、心不全、高血圧、脳梗塞・脳出血、不整脈、末梢血管障害があります。

特に高血圧は、脳卒中や心臓病のリスクを高めるといわれています。脳卒中とは、脳の動脈硬化が進み、脳の血管が詰まったり、破れたりする病気の総称で、日本人の死因の第3位を占めます。脳の血管が破れる脳出血、脳動脈瘤が破裂するくも膜下出血、脳の血管が詰まる脳梗塞に分かれます。

また、主な心臓病である心筋梗塞は、冠動脈の動脈硬化やけいれんによって心筋への血流が不十分となり、心筋が壊死に陥った状態のことです。心筋梗塞は急性心筋梗塞と陳旧性心筋梗塞に分類され、急性心筋梗塞は心原性ショックや致死性不整脈などの原因となり、 陳旧性心筋梗塞は、慢性心不全の原因となります。

循環器の病気

  • 心筋梗塞
  • 心不全
  • 高血圧
  • 脳梗塞、脳出血
  • 不整脈
  • 末梢血管障害

生活習慣病

生活習慣病とは、毎日の食事や、飲酒、たばこなどの嗜好品、生活環境など日常生活の積み重ねが原因で発症する疾患の総称です。実に、日本人の約2/3の死因が生活習慣病であるといわれています。生活習慣病には、がん、心臓病、脳卒中をはじめ、糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、メタボリックシンドロームなども含まれます。

特に、メタボリックシンドロームに関連する高血圧、脂質異常症(高脂血症)、高血糖には過度の飲酒が関連していることが多いといわれています。メタボリックシンドロームは、肥満による内臓脂肪の蓄積で起こりますが、肥満には酒自体のカロリーだけでなく、脂っこいおつまみの食べ過ぎやアルコールによる食欲増進も関連します。

飲酒と糖尿病の関連は、アルコール自体の作用やアルコールの体内での処理(代謝)が血糖値に影響を与えることのほか、アルコールによる慢性膵炎によりインスリンの分泌が低下することも関連してきます。飲酒と脂質異常症の関連は、飲酒時のカロリーの摂り過ぎが主な原因ですが、アルコールの代謝に伴い血液中の脂質が高くなることもあります。また、プリン体を多く含むビールなどを長期にわたって大量に摂取すると高尿酸血症になる可能性があり、痛風の危険因子となります。

生活習慣病にかかわる病気

  • メタボリックシンドローム(高血圧、脂質異常症、高血糖)
  • 糖尿病
  • 痛風

神経・筋肉系の病気

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飲酒による神経障害は、アルコール自体の毒性よりも、飲酒に伴う食事のバランスの崩れによるビタミンB1、B6、B12の不足が原因となることが多いといわれています。特にビタミンB1は、アルコールの代謝に使われるため、慢性的なB1欠乏状態が起こりやすくなります。ビタミン欠乏性の障害は、全身のさまざまな神経で起こります。

アルコール性末梢神経障害は、手足の末梢にしびれ感、痛み、脱力、筋萎縮を起こします。ビタミンB1の欠乏で起こるウェルニッケ脳症では、無欲状態になり、眼球運動障害(眼があまり動かなくなる)、眼振(眼球がリズミカルに動く)、失調性歩行(酔ったようにふらふら歩く)が起こります。
また、飲酒により小脳が萎縮するアルコール性小脳失調症でも歩行が不安定になり、転倒などによる頭部外傷が起こりやすくなります。

神経・筋肉系の病気

  • アルコール性末梢神経障害
  • ウェルニッケ脳症
  • 眼振
  • 失調性歩行
  • アルコール性小脳失調症

アルコール依存症かな?と思う人が身近にいたら