入院・通院の治療の流れと治療内容

アルコール依存症の専門医療機関を受診すると、入院治療が原則的に検討されますが、患者さんの状態などによっては通院治療が可能な場合もあります。

ここでは、入院および通院の一般的な治療の流れと、治療内容をご説明します。入院か通院かの選択は、アルコール依存症専門医とよく相談のうえ、決めるようにしましょう。


入院治療の場合

入院となる条件

重度の離脱症状(振戦せん妄など)、身体疾患の重症度、精神的に不安定、家族が疲弊している など

  • 初回面談

    単身者の場合は、患者さん自身または福祉事務所の担当ケースワーカーなど地域の支援者と同伴で、ご家族がいる場合はご家族と同伴で初回面談に行くのが一般的です。最初は患者さん本人のみ、その後ご家族と一緒に、または入れ替わって面談は約40分~1時間行われます。 
    初回の面談では、必ずしも病気を発見することが目的ではありません。医師からは、患者さん自身が飲酒に対して問題を感じているのか、問題として感じているなら、どのような問題として捉えているのかをヒアリングされます。さらに、そのような状況に陥った背景やエピソード、幼少時代の自身の振り返り、治療に対する抵抗感などを、答えやすい順番で質問されます。 
    また、もう一つ大切なこととして、「治療を受けながらの生活が成り立つのか」という視点での質問もあります。経済状況や親族の援助はあるのかなど、具体的な生活についても確認されます。

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  • 入院(一般的な入院期間:約2ヶ月〜3ヶ月)

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  • 解毒治療

    アルコール依存症の患者さんの多くは、離脱症状を起こします。悪化して、「振戦せん妄」という意識障害を発症し、幻覚症状が現れるなど症状の重さには個人差があるため、それぞれの症状に合わせた治療が必要です。 
    解毒期には、病態に即した補液やベンゾジアゼピン系薬剤の投与により離脱症状を抑えることが治療の中心となります。その他、幻覚症状がある場合は抗精神病薬、不眠には睡眠導入薬、うつ症状には抗うつ薬が処方されます。早ければ1週間程度で離脱症状は治まります。また、肝臓疾患などの重複身体障害があれば、この時期に並行して治療します。

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  • 家族面接 | リハビリテーション(治療プログラム) | 自助グループ

    家族面接
    アルコール依存症という病気や障害、そのほかの問題を抱えて、どのように対処するかを相談できず、途方に暮れているご家族に必要な知識や情報を知ってもらう機会として、専門施設などではご家族のための教室を設けています。どのように問題に対処するかを専門家とともに考えることで、患者さんやご家族が自分たちの問題に取り組みやすくなり、何とかやっていこうという気持ちを取り戻すことを目指します。

    リハビリテーション
    心身の状態が安定したら、リハビリテーションに入っていきます。リハビリテーションでは心理社会的治療が中心に行われ、患者さんの断酒しようとする気持ちを維持して支えます。 心理社会的治療にはさまざまな種類があり、いくつかの療法を組み合わせながら治療が進められます。
    ●酒害教育 
    ●集団精神療法(集団で受ける精神療法で、治療の中心となります)
    医師らの指導のもと、数名の患者さんがさまざまな問題について話し合ったりしながら、断酒や回復について考えていきます。話題のテーマは次のようなものです。
     ・自身の飲酒問題について
     ・なぜ飲み続けたのか
     ・断酒の心構え
     ・再発を防ぐ方法 など
    ●個人精神療法
     飲酒に対する考え方だけでなく、家族のこと、自身の幼少時代、経済面など個人的な内容の相談もできる。

    自助グループ
    アルコール依存症患者さん本人だけで断酒生活を継続することは容易ではありません。患者さんたちが運営する組織である自助グループに参加し、共感できる仲間に自分の体験談を語ったり、人の体験談を聞いたりして、支え合うことが重要です。
    アルコール依存症の患者さんは、治療初期からその後一生、再発のリスクを背負いながら日常生活を送ることになります。したがって、治療の進行に関係なく、自助グループに参加して断酒継続につなげることは大きな意味があります。

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  • 退院

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  • 通院 | 自助グループ

    自助グループ
    アルコール依存症患者さん本人だけで断酒生活を継続することは容易ではありません。患者さんたちが運営する組織である自助グループに参加し、共感できる仲間に自分の体験談を語ったり、人の体験談を聞いたりして、支え合うことが重要です。
    アルコール依存症の患者さんは、治療初期からその後一生、再発のリスクを背負いながら日常生活を送ることになります。したがって、治療の進行に関係なく、自助グループに参加して断酒継続につなげることは大きな意味があります。


通院治療の場合

通院となる条件

患者さんの離脱症状や身体疾患が軽度で治療意欲が比較的高い、患者さんが医師の指示にしたがって通院することができる など

通院治療の流れ

アルコール依存症から抜け出す本. 樋口 進/監修. 2011. 講談社 より改変

通院のメリットは、家族が患者さん本人の回復の様子を肌で感じることができる点です。飲酒量を減らしたり、また患者さんが断酒を継続する過程を家族が共有することで、アルコール依存症について患者さんと共に学ぶことは、今後の家族全体の回復にとっても非常に大切なことです。