イネイブリング
~依存症問題では、よかれと思ってしたことが裏目に出る~
アルコール依存症者が飲み続けることを可能にする(周囲の人の)行為を「イネイブリング」、それをしてしまう人のことを「イネイブラー」と言います。たとえば二日酔いで朝起きてこない本人に代わって会社に電話を入れる、サラ金の借金を返してあげるなど、周囲がよかれと思ってすることがイネイブリングになりがちです。責任の肩代わりをすると本人が感じるべき後悔や痛みを軽減してしまうため、本人は嫌な思いをせずにすみます。その結果、「喉元過ぎれば」で、飲み続けることを可能にしてしまう悪循環になるのです。家族、友人、同僚、上司など、本人のことを大切に思っている人ほどイネイブラーになりやすくなります。
依存症は家族を巻き込む病
依存症患者は次々と問題を起こすので、周囲はイネイブリングの仕組みを知らないとどんどん巻き込まれて疲弊していきます。悪循環が進む背景には、次のような3つのコントロールがあります。
- 飲酒をコントロールする(怒る、説教する、監視する、酒を隠す、捨てる、など)
- 飲酒の原因をコントロールする(機嫌をうかがう、ストレスを軽減する、生活を変えさせる、など)
- 飲酒の結果をコントロールする(介抱する、会社に言いわけをする、迷惑をかけた人にあやまる、借金の肩代わりをする、など)
アルコール依存症は、飲まずにはいられなくなる病です。周囲がいくら酒をやめさせようとしても、ことごとく失敗に終わり、最終的には本人のしたことの後始末に追われるようになります。こうした悪循環を断ち切ることが、介入の第一歩になります。
周囲も家族教室や自助グループへ
イネイブリングをやめるには、病院や精神保健福祉センターなどで開催している家族教室や自助グループで、まずはつらさを話して少し楽になり、依存症について学ぶことが役立ちます。イネイブリングの多くは、本人に対する愛情や好意、責任感から始まります。そこに罪はありません。コントロールしようとするのではなく、「私は心配だ」「治療を受けて欲しい」と「私」を主語にして話すと、気持ちが伝わりやすくなります。イネイブリングをやめると本人は危機感を感じるので、非難されるなど一時的に状況が悪化したよう見えることがありますが、それが次のステップにつながります。
まとめ:特定非営利活動法人ASK※外部サイトへ移動します。
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