Doctor's Voice

院長 中田 千尋

慈友クリニック
院長 中田 千尋

慈友クリニックの外観

東京の中心地である新宿区に拠点を構えるクリニック。精神科医療グループとして知られる翠会ヘルスケアグループの一員として、一般内科に加え、人間ドック・健康診断部門、心療内科、精神科を備える。アルコール依存症の専門医療部門として大規模なアルコールデイケアを有し、通院による回復のためのプログラムを実施している。「こころ」と「からだ」両面からの健康サポートが最大の特色で、特にアルコール依存症の教育と家族へのフォローに力を注いでいる。

メッセージ

―都内ではアルコール専門外来のあるクリニックは少ないようですが。

アルコール依存症の医療は精神科で行われていますが、入院治療の多くは精神科病院が担い、その多くは郊外に立地しています。対して当クリニックは都心にあり、しかも駅を降りてすぐのところにあるのが大きな特徴です。いろいろな方が受診されますが、会社員が多いのも特徴で、週3日夜間ミーティングを開催し、仕事終わりにも立ち寄りやすい環境づくりに力を注いでいます。ときに関東近県以外の方々も来られています。
また、人間ドック・健康診断を主軸とする内科を併設し、エコーやCT、マンモグラフィー等の検査機器の充実により、アルコール依存症の方の身体疾患も内科的に援助することができます。アルコール専門クリニックに内科が併設されている医療機関は多くはないと思っています。

―治療において大切にされていることは何ですか。

アルコール医療の中核は何と言っても依存症です。アルコール依存症は脳の報酬系の病的な変化で起こること、慢性の疾患で、飲酒をやめない限り進行してしまう疾患です。その点では糖尿病などと同じで、できるだけ早く治療導入して疾患について理解してもらうこと、可能な限り進行させないことが大切です。私自身、かつて重症の方が多い施設に勤務しており、外来で治療できる方は決して重症化させたくないと思っています。
慢性進行性の疾患では、治療の基本は外来で、継続して通院することが大切です。外来医療では通常、医師と1対1の個人精神療法を行います。外来で治療が難しければ入院に治療の場を移さなければなりませんが、この間には大きな隔たりがあります。つまり、入院するほどではないが、ただ外来に通うだけでは安定しない、その間を埋めるのが当クリニックの役割だと思っています。そのために当クリニックには、いくつかの取り組みがありますが中心はデイケアです。デイケアでは、看護師、精神保健福祉士、臨床心理士、作業療法士といった専門職が対応し、集団精神療法を行っています。治療効果を高めるためにも当クリニックでは、職員のチームワークを何よりも大切にしています。

―アルコール依存症の教育に注力されるのはなぜですか。

お酒が止められない、お酒によって問題が起こっているとなると、どうしても「生き辛さ」、「心の闇」といったことが取り上げられますが、それよりもメカニズムをしっかりと説明し、「いまどういう状態か」を正しく伝えます。そこから、必要なものを選び出し、医療の最適化を図るためにも、患者さんや、そのご家族にも疾患を理解してもらうことが肝心です。
アルコール依存症は生活習慣病です。発症すると、自分の生活を見直して、それと共存する道を考えていかなければなりません。そのためには病気を理解したほうがよいですよね。生活習慣病は人を選びません。年齢を重ねればなりやすくなりますが、誰がいつなるのかはわかりません。
アルコール依存症は、繰り返し繰り返しアルコールを飲んだ結果、起こってくる病気です。ずっと飲んでいて、いつの間にかなってしまった人が多いですが、繰り返し飲まないでは、いられない強い理由のある人もいます。一度アルコール依存症になれば、断酒をしない限り悪い方向へ進んでしまうのは、どちらの場合でも同じです。脳の前頭葉機能が低下していたり、精神症状を合併したりしている方はなかなか難しい場合もありますが、疾患理解はアルコール依存症にどう向き合っていくかの起点ではないでしょうか。
ただ、教育といっても疾患の理解のみには限らず、治療のプロセス全体がそのようなニュアンスをもっています。アルコール依存症の方は治療の過程で、それぞれが自分なりの向き合い方を見つけてゆかれます。私達の役割はそのお手伝いをすることなのだと思っています。

―ご家族・周囲の方を対象としたサポートについてお聞かせください。

治療は自分自身のものです。自分の意志で立って歩いて医療機関に来るものです。ところがアルコール依存症では、最初の頃は問題があるにもかかわらず医療を受診しようとしない方が今でも少なくありません。ご家族や周囲の方々も、そんなアルコール依存症の症状に影響され、どうしていいかわからなくなっている。そのような場合、専門職による相談や家族会で悩みを話すことで、少し気持ちも和らぎ、良い考えが頭に浮かんでくるかもしれません。
また、ご家族や周囲の方々と関係が悪くなっていない方でも、自分のことを理解し、断酒生活を支えてくれる応援団がいることは、とても心強いものです。当院では毎月、「よくわかる依存症セミナー」を開催しております。ご家族や支援者の方にも参加して学んで頂くことで、より理解が進むお手伝いになるのではないかと思っています。


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