Doctor's Voice

奥田 正英先生

八事アルコール医療センター
センター長 奥田 正英

  • 八事アルコール医療センター 医療法人資生会 八事病院
  • 〒468-0073 名古屋市天白区塩釜口一丁目403番地
  • TEL:052-832-2130
  • http://yagotoal.jp/
八事アルコール医療センター 外観

心と身体の健康を守る医療機関として、40年以上の歴史と実績をもつ八事病院から生まれたセンター。アルコールによる健康障害の早期発見・早期回復、および社会復帰に対しての支援を行っています。アルコールが原因となる胃腸や肝臓、すい臓など内科の病気については消化器専門の内科医が、依存症などの心の病気については精神科医が診療に当たり、外来と入院の二本柱で、「選択の範囲を広げる治療」に定評があります。軽度の段階での来院を願って、外来治療のプログラムが充実している点が特徴的です。

メッセージ

――内科と精神科、それぞれの専門医が診療に当たられるのですね。

当院では、チーム医療を重視しています。医師を中心に、精神保健福祉士、臨床心理士、作業療法士、音楽療法士、言語聴覚士が密にコミュニケーションを取りながら、適切な知識や技能をもって治療に当たっています。当センターの母胎は精神科病院です。とはいえ、アルコールによる問題を抱えた患者さまは、なかなか精神科を受診しようとはしません。肝臓やすい臓が悪いだけなのに、なぜ精神科に行かないといけないのか、納得ができないからです。内科系の病院で入院しても、退院してしばらくすると再び飲酒をし、再入院を繰り返すというケースも少なくありません。そのため、内科と精神科の両方からのアプローチで総合的に診療ができる場が必要なのです。アルコール医療センターを立ち上げたことで、少し精神科へのハードルが低くなったと思っています。

――「インフォームド・コンセント」を基本とした医療方針についておしえてください。

「インフォームド・コンセント」は「説明と同意」を指し、今では医療全般で広く取り入れられている姿勢です。当センターでも、通院や入院、さらには社会復帰のお手伝いのための施設を用意していますので、その説明を行い、患者ご本人の自由意思に基づいた選択/決定を大事にしています。とくにアルコール医療においては、内科/精神科の選択、外来/入院の選択、外来での通院プログラム/家族プログラムの選択など、それぞれのご希望やライフスタイルに沿って多様な選択ができるよう努めています。また、アルコールは毒物という認識のもと、「早期介入」を重要視し、完全な断酒の前の節酒も大切な選択肢のひとつだと考えています。その全てにおいて、ご本人の自己決定を尊重しています。

――患者さまにどのような接し方を心がけておられますか?

  • 自己決定権を尊重すること。
  • アルコールによる心身の健康障害について知ってもらうこと。
  • 一人で抱え込まないこと。

外来と入院で、接し方は基本的に変わりません。中でも(2)についての基本知識は本当に大事です。ご本人とご家族にはビデオ学習で学んでいただきますが、何よりも患者さまの健康な心とアルコールによる病気の心についての理解が必要となります。例えば、離脱期に入るとイライラして怒りっぽくなったり、病院や看護師への不平不満などがしばしば出てきたりします。その対応はデリケートですが、「病気の心」がどういうものかをよく理解してもらい、しっかりと対応しています。アルコール依存症は「コロコロ病」「否認の病」などとも言われますが、アルコールに頼って現実の辛い状況をやり過ごそうとする「現実逃避の病」でもあります。飲酒末期の連続飲酒ともなると、栄養障害を含めて全身衰弱の状態で入院されるケースも珍しくありません。その場合、食事や排泄など身の周りの現実的なことを自分で行う日常生活レベルから、対人関係など社会障害レベルまで自立できるように援助するため、当センターでは「愛ある厳しい治療」をポリシーとして、決して無理はしませんが、心身ともに多少なりとも痛みを伴うリハビリテーションを行っています。

――医療連携や自助グループとの関連についてお聞かせください。

当センターでは、地域ネットワークと断酒会との結びつきを大切にしています。2016年から八事アルコールネットを立ち上げ、八事地域の医療機関・行政機関との連携の緊密化を図っています。当センターをはじめ、名古屋第二赤十字病院や名古屋記念病院、聖霊病院、昭和・天白区の保健所に区役所、さらに消防署の救急や警察署との連携を強化し、アルコール医療をスムーズに進められるように取り組んでいます。また、当センターの入院治療におけるワークブック「YARP(通称ヤープ・Yagoto Alcohol Rehabilitation Program)」では、退院後に断酒会へ繋がるようにプログラムを組んでいます。具体的には、毎週「断酒の集い」を行い、外泊が決まると断酒会館の見学や断酒会への参加を目的のひとつにしています。また、断酒会と当センタースタッフとの「交流会」も定期的に開催し、情報交換を怠りません。

――アルコールが原因となる問題に悩むご家族へのメッセージをお願いします。

奥田 正英先生

「ご家族は治療スタッフの一員」というのが、当センターの根本的な考え方です。ご家族の方には入院中に「家族教室」へ可能な限り参加していただきますし、アルコール関連問題でお困りのご家族向けに「家族教室 外来家族支援教育プログラム YaAF(通称ヤーフ・Yagoto Alcohol Family Support & Education Program)」を行っています。アルコール関連問題の解決には、専門的な治療的対応が欠かせません。アルコールの飲み方が普通でないように思えたり、アルコールが原因で家族同士の言い争いや衝突が増えたと感じる場合には、ご家族だけでも受診してください。病気への正しい理解を深めたり、暴力の際の適切な対応方法を知ったりすることは、問題解決の第一歩。医療者はアルコール依存症であるご本人の背中を押すことはできても、手を引いてあげられるのはご家族だけです。近くにいると、どうしても本人の意識や性格の問題にしてしまいがちですが、アルコール依存症は病気です。まずはその事実をしっかりと受け止めて、諦めず、できるだけ手を差し伸べていきましょう。そのためのサポートこそ、当センターの役割です。



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