Doctor's Voice

堀 達先生

よしの病院
理事長 手島 正大

  • 医療法人社団 正心会 よしの病院
  • 〒194-0203 東京都町田市図師町2252
  • TEL:042-791-0734
  • http://www.yoshinohp.com/
よしの病院 外観

近くには桜の名所として名高い尾根緑道や小山田緑地など、多摩丘陵の豊かな自然に囲まれて立つ医院。166床と小規模ながら、2つのデイケア、宿泊型自立訓練、グループホームなどの付属施設を持ち、早期社会復帰の推進に努められています。また、地域に根付いた病院であることを理念のひとつに掲げ、保健所やその他近隣地域の医療機関との連携を図っておられます。日本精神神経学会の精神科専門医研修施設に認定され、経験豊富な精神科専門医、指導医、精神保健指定医が在籍されていることでも知られます。

メッセージ

—アルコール依存症を理解することに力を注がれておられますね。

アルコール依存症の治療において、病気への正しい知識は欠かせません。最初にお伝えするのは、「飲み方を失敗したつもりかもしれないが、そんなものではないんですよ」ということ。そういう単純なモラルの問題ではないのです。「アルコール」という合法的で、依存性のある薬物を長期間に亘って大量摂取することで、飲酒欲求がコントロールできなくなる病気なのです。慢性かつ進行性のある病気だと知ることから始まります。依存症は、お酒という依存性の物質に脳が虜になる状態。それはすでに体質が変わったということです。これは仕方がありません。体質に合わないものを摂取すると死に繋がります。だから、飲酒を諦めるしかない。その覚悟が必要となります。当院ではその方法や工程をお伝えしているのです。

—アルコール依存症の治療に対するポリシーを教えてください。

よしの病院 内観

疾患教育としては、アルコール依存症を生物学的に基礎付けられた疾患、つまり「脳の病気」としてとらえます。繰り返し飲酒によるアルコール依存症は、完治はしませんが回復する病気です。そのため、入院での治療を重視しています。当院では、入院生活における基本的な4つの目標を掲げています。患者さんが相互に、 1.病気に対して正しい知識をもつこと。2.協力し学び合うこと。3.断酒への心構えを養うこと。4.社会復帰に向かう姿勢を常に忘れないこと。その上で、我々の援助を活用して回復を目指してください。入院は3ヶ月単位です。3ヶ月でひとつの節目。何かしらの“ひっかかり”を得られると考えられている期間です。入院生活を始めると2週間で頭がすっきりしてきます。1ヵ月は離脱期として、検査をはじめ精神安定剤の投与や点滴による栄養補給などを行います。2ヵ月目は依存について学び、ARP(アルコール・リハビリテーション・プログラム)に取り組んでもらいます。入院において何より大事なのは、意味付けだからです。

—ARP(アルコール・リハビリテーション・プログラム)では、どのようなプログラムがあるのでしょうか。

まず、断酒と回復を助けるために抗酒剤を服用し、飲酒することで不快な症状が現れることで「今日はお酒を飲まない」という決意の確認を行います。そして、酒害教室でアルコール依存症についての正しい知識を身につけます。精神依存・身体依存はもちろんのこと、アルコール探索行動や離脱症状、連続飲酒発作といった症状について学ぶのです。それらの病気が体力に及ぼす影響や、家庭・社会への影響、治療に至る経緯などもVTRで学習します。また、グループ・ワークでは、テキストを使用してテーマごとに各自が自由に話す場を設けます。他人の話を聞くことで、過去の自分を振り返り、自分が「アルコール依存症である」と認めることが大切だからです。経験を基に、皆が回復を手助けする共同体・自助グループへの参加も必須です。並行して、院内例会や院外自助グループへの参加も後押しし、レクリエーションやフィールドワークなども実施しています。

—患者さんが相互の関係性を築くことに注目されるのはなぜですか?

人は役割を与えられることで自分をコントロールすることができると考えます。当院では、自由を束縛することなく、自治会や自助グループで互いを鏡としながら自分自身を知ることを大切にしています。悩みを周囲の人々が受け止めてくれる環境は、希望へと繋がるからです。当院のスタッフはあくまでも援助することしかできません。「酒をやめる」という行動は、自分にしか成せないもの。そして、継続することの重要性を考えれば、退院してからが治療の本番とも言えます。そのため、当院では外来のプログラムとして「酒なし生活研究会」を週1回実施しています。自分の飲酒欲求や行動を振り返って、その背景にあるものを焙り出していくことで、「自分の回復」について具体的に思い巡らせるようになるからです。

—最後に、ご家族がどう関与すればいいか教えてください。

手島 正大先生

アルコール依存症の患者さんを持つご家族から、「どうやって接したらいいか?」と訊かれることが多いですが、まずは話を聞いてあげることです。アルコールでその場しのぎを重ねる人は、必ずストレスを抱えています。それは話しても理解されないような悩みを抱えているということです。その悩みを聞いてあげることが大事なのです。「お酒はやめろ」といった、耳にタコができている言葉は言わないこと。飲むことをやめられない本人も辛いので、それは理解してください。そして、やめられている間は褒めてあげてください。くれぐれも本人を騙して病院へ連れて行くようなことはしないで、やめるための動機付け(=やめないと家族を失う、など)を行うことから始めてください。



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