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院長 倉光 かすみ

倉光病院
院長 倉光 かすみ

倉光病院 外観

豊かな自然に囲まれた医院で、「安心感」「信頼感」「癒し」をスローガンに、アルコール依存症・認知症・社会復帰を三本柱として治療に取り組んでおられます。治療に加えて、社会福祉法人として退院後の住居や仕事に至るまでのフォローをするだけに留まらず、企業として地域貢献に注力されていることも特徴的です。2016年春には敷地内にデイケアセンターが移転新築され、益々のデイケア機能の充実が実現されます。また、跡地にはバラや牡丹が植えられ、美しい庭園を持つ医療施設に生まれ変わります。

メッセージ

—倉光病院の特徴を教えてください。

当院では、心を使うプログラムと身体を使うプログラムを交互に組み込んでいます。身体を動かすものの中では、山登りや農耕などが独自のプログラムではないでしょうか。週1回、土に触れることはとてもいい効果をもたらしています。ものを育てること、世話をすることは、生きがいや癒しにつながります。とくに、実になって収穫できるものが一番いいですね。農耕を取り入れることができるのは当院がこの場所にあるからこそですし、初代である父が農家出身だったこともあります。また、農耕の指導は回復者の方々が担ってくれているんですよ。

—回復者の方々が医院内で働かれているのですか?

倉光病院 中庭

退院後のフォローの一環として、当院では就労支援を行っています。回復後、掃除や食事の用意などに携わり、ここで働いている人も少なくありません。入居者の食事については、あえて地元・飯盛のお米を買い取って利用しています。地産池消として購入できるものにお金を払うことで、周辺地域の人々とのつながりをつくることも社会貢献のひとつだと考えているからです。
デイケアでしっかりとしたフォローを行っているからか、当院の再入院率は低いです。退院後のサポートの影響が重要だと考えるからこそ、働ける人には当院に力を貸してもらっています。回復者にはご近所の植木屋さんや電気屋さんもいて、気づけば院内でいろいろと手伝ってくれてます(笑)。ここで育った私にとって、そういった方々との交流はごく自然なことでした。そもそもアルコール依存症の患者さんとは、長いお付き合いになります。長く付き合えるからこそ、つながりが構築できるのだとも思っています。

—デイケアではどういったサポートが行われているのでしょうか。

2011年春から、近年のデイケア利用ニーズの高まりを受けて、定員規模を拡大し、各疾患に対応するデイケア体制を取っています。アルコール依存症においては、アルコールリカバリーセンター(ARC)という外来治療を行っています。個人に適切な「場」を提案し、さまざまな活動を通して他者と交流し、体験や気持ちを分かち合って、社会生活や社会復帰を可能にすることが目的です。病院はあくまでも自助グループへの橋渡し的存在。だからこそ、3か月の入院生活を終えてからの人生をどうサポートするかが大切なのです。
2016年春にはデイケアセンターが新しくなります。従来よりも広い施設になりますので、そこでは男女別のプログラムに力を注ぐつもりです。男女が同じ空間にいると、どうしても本音で話せないという声を聞きます。とくに女性からそういった意見が多いため、「なでしこミーティング」という女性のクローズドを始めました。それをもっと徹底していきたいと考えています。

—その他、治療スタイルでのポリシーはありますか?

就労支援やデイケアに見られるように、入院中から退院後の地域生活への復帰がスムーズになるよう、チームアプローチに基づいた多角的な治療アプローチを心がけています。作業療法や訪問支援もそのひとつですが、とくに大切に考えているのはご家族へのフォローです。月1回の家族教室へは、少なくとも3回は参加してほしいとお願いする中、ご家族には「自分のために来てほしい」と伝えています。ご家族がラクになるために、と。その姿勢は、患者さん本人の回復にも大きく影響を与えます。アルコール依存症という病気は、長い付き合いになります。段階によって乗り越えていくことも多いため、構いすぎなくていいとも言っています。ご家族がラクになるために、病院を利用してくれたらいいんですよ。

—今後の目標について、お聞かせください。

院長 倉光 かすみ

福岡県はとても飲酒運転に厳しい規則と気風があります。1回でも飲酒運転で捕まれば、専門医を受診する義務が課せられます。そのため、学校でもしっかりとした教育を行っています。また、年に1回は当院スタッフを連れて最新医療の現場であるアメリカで研修を受け、常に新しいことを勉強している中で、エクササイズとしてアルコール依存症への理解を深める授業が行われていることを知りました。そういった点から、当院でも子供たちへの教室を定期的に開催したいと考えています。アルコール依存症は、とても幅広い病気です。他の疾病に比べて、薬物治療が上手くいっていない分、必然的に人が関わることになります。だからこそ、きちんとした教育が重要なのです。そうして理解が深まり、知識が広がれば、いまなお根強い偏見も減らせるかもしれません。



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