Doctor's Voice

副院長 村山 昌暢

赤城高原ホスピタル
副 院 長 村山 昌暢
副 院 長 松本 功

赤城高原ホスピタル 外観

伊香保温泉にほど近く、赤城山麓の小高い丘に位置している北関東で唯一のアルコール依存症の専門病院。開放病棟で任意入院のため、一月に50名ほどの入退院があり、入院患者の約半数が女性患者という特徴を持つ病院です。「絶望のそばに回復がある」を合言葉に、依存症者のご家族へのサポートに定評があります。アルコールだけでなく、窃盗癖、摂食障害など物質嗜癖依存症全般の治療プログラムが充実しています。

メッセージ

—赤城高原ホスピタルにおける治療のポリシーを教えてください。

副 院 長 村山 昌暢

村山副院長) 当院は、ご家族の相談から、アルコール依存症当事者の治療、リハビリ、付随する家族問題まで、幅広く総合的に対応する開放型のアルコール依存症専門病院です。アルコール依存症は、病院やスタッフが治すものではなく、あくまでも本人が治すもの。回復・立ち直りの場を提供するのが我々の役割です。「医療」に依存することがないよう、自助グループや断酒会との連携を密にしています。
また、ご家族の悩みも治療の枠の中で捉え、ペイシェント(依存症当事者)のことで困っているクライアントと向き合うことを心がけています。例えば、アルコール依存症の夫や息子の話をしたがる女性には、「あなたはどう困っているの?」と、ご家族本人の想いをピックアップします。そうすることで、ご家族本人の気づきに繋げるのです。

—治療プログラムは、具体的にどのような内容ですか?

赤城高原ホスピタル 設備

村山副院長) 当院での治療は、家族療法と集団療法が中心です。アルコール依存症の治療にあたっては、家族全体を視野に入れる必要があります。当院では毎日院内家族会を開き、週4日の集団家族療法を行っています。本人の治療はもちろん、酒害問題に付随した家族問題や家庭内暴力などにも対応し、ご家族からの相談はもとより、治療や入院にも応じます。本人の登場を急ぐことなく、まずはご家族のケアを優先することが、結局は治療の早道になることが多いと考えています。
アルコール依存症者は、身体疾患やトラブルを抱えることが多く、長期間一人で飲み続けることはできません。長期にわたって飲み続けている依存症者の周りには、それを可能にしている人=イネイブラーの存在があります。酒害者本人の自立と責任を知らず知らずのうちに奪い、問題の解決を遠ざけているにも関わらず、それを愛情だと誤解していることが少なくありません。ご家族の意識や態度が変われば、アルコール依存症の当事者の飲酒行動や考え方も変わるのです。

—付随する家族問題への対応にも定評がありますね。

村山副院長) 当院では、ご家族からの相談はもちろん、カウンセリング、教育、治療、さらには、家庭内問題としての不和、暴力、摂食障害や薬物乱用などにも対応したプログラムを有しており、アダルト・チルドレン(AC)問題の教育と対応も可能です。ACとは、程度の差こそあれ、トラウマを抱えて大人になった人たちのこと。親の世代に嗜癖問題があり、生き辛さを自覚し、本人も依存症になるケースが少なくありません。歪んだ家族関係の中で感情を押し殺すことを強いられてきたACの「正常な対人関係」への失敗や挫折は、治療あるいは正しい対応によって、回復することが可能です。また、親のアルコール問題に早くから対処することで、次世代の子供たちの成人後に起こる問題を予防することができるのです。

—自助グループの存在については、どのようにお考えですか?

赤城高原ホスピタル 施設内

松本副院長) アルコール依存症の治療において、自助グループとの協力は不可欠です。当院では、AAや断酒会など、約20もの多種多様な自助グループと日常的な交流を持っています。自助グループの催しにも積極的に参加し、体験者や回復者の話を聞く機会を得ています。
また、当院には患者自治会もあり、役員は月に1度選挙によって選ばれます。快適な入院生活を送るため、自治会役員と病院スタッフの話し合いも定期的に行っており、月1回のレクリエーションの企画・運営も任せています。レクリエーションへの参加は任意で、毎回50~60人位の参加者で賑わいます。クリスマスなどの季節行事をはじめ、DVDを見ながら太極拳をしたり、過去にはソフトボールやハイキング、スイカ割りといったイベントを催しました。

—これまでのご経験の中で、印象深い患者さんはいらっしゃいますか。

副 院 長 松本 功

松本副院長) 正直、自殺をしてしまった人は強く記憶に残ってしまいます。本人に責任を持たせるような動きから、絶望に至り、自殺してしまうケースは、反省も含めて様々なことを考えさえられます。
村山副院長) それに反して、喧嘩別れのようにして通院をやめてしまった人と何年後かにAAのイベントで声をかけられたことがあります。生きてないかもしれないと思っていた人が立ち直ってスッキリされている姿を見ると、こちらが教えられることも。
松本副院長) ACの方の話を聞く中で、それでも生き残って来ていることを思えば、生きる力の凄さに感銘を受けることもありますね。

—最後に、悩みを抱えるご家族にメッセージをお願いします。

副 院 長 村山 昌暢

村山副院長) 困ったら、困っている方が動くといい。動くというのは、例えば相談の電話であったり、専門病院へ行くようにとのアドバイスを受けて来院することであったり、そこから家族会に定期的に参加したり。一歩一歩進んでいくことが大切です。それが、本人のためだけではなく、巻き込まれてしまう家族たちの問題解決になることもあるからです。夫のアルコール依存症で相談に来られた女性が、家族会に参加する中で、自分の過去に向き合い、ご自身の家族問題に気づいたという事例もあります。まずは、問題がどこにあるのかを知るためにも、動くことが重要です。



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