Doctor's Voice

吉田 博信 先生

和歌浦病院 精神神経科
吉田 博信 先生

和歌浦病院 外観

外来治療専門施設としてアルコールの指導を行っている和歌浦病院では、平成17年7月から、アルコールの問題をお持ちの方や支えるご家族のために、週1回のアルコール院内例会を開催。アルコール依存症の当事者がグループ活動を通して、断酒への意欲を高め、断酒を継続できることを目的に支え合いを強化するサポートをされています。約10年、大阪の専門病院でアルコール医療に携わり、現在、和歌山市でアルコール医療の一端を受け持つ吉田博信先生と精神保健福祉士の岸田寿一さんにお話を伺いました。

メッセージ

—和歌山市でのアルコール医療の現状を教えてください。

精神保健福祉士 岸田寿一

現在、和歌山市(和歌山県)には、アルコール依存症治療の専門医療機関が乏しい状態です。
そのためか、当院は一般精神科病院でありながら、精神保健福祉士が受ける受診・入院相談の約3分の1が、アルコール依存症に関するものです。当院では、外来通院によるアルコール依存症治療を中心に、入院によるアルコール治療プログラムを持たないため、希望者や必要であると判断した患者さんには、入院施設を有する専門病院をご紹介しています。専門病院での治療を終えられた方には、入院先の病院と連携を取りながら外来でのフォロー、必要に応じてデイケア利用の相談や、訪問看護を行っています。

—アルコール院内例会ではどのような活動をされているのですか?

院内例会は毎週火曜日14時~15時で開催しています。参加費は掛かりません。毎回、「ストレスとお酒」「生きがいとお酒」「お酒は家で飲む?外で飲む?」といったテーマに基づいて、それぞれの体験や考えを語ってもらいます。通院患者さんをはじめ、デイケア利用者、地域の断酒会会員の方、AA和歌山グループの方……と、さまざまなメンバーにご参加いただいています。院外からの参加をお迎えすることで、幅広い体験談を聴かせてもらうことができます。
また、近年増加している女性の患者さんにとっては、まだまだ例会参加への壁が高く、女性の精神保健福祉士を中心に、個別カウンセリングの形態で断酒継続のお手伝いをさせていただいています。まもなく500回を迎える例会が、地域での断酒継続のための資源として、さらに活用いただける自助グループになればと思っています。

—院内例会について、今後の課題はありますか?

和歌浦病院 外観

ご家族の悩みを本当に理解するためには、我々が乗り越えなければならない大きな壁があるように思っています。簡単に理解できたと早合点しないように、いつも自戒しています。
近年、若い女性の来院が増えてきている印象もあります。幼児を持つ母親に役立つ支援方法を模索し、近く家族教室も開くべく準備をしています。和歌山県断酒連合会や断酒道場の周年事業、地域断酒会などにも不定期ながら職員が参加しています。精神保健福祉士を中心に、院外の研修会や勉強会にも出席し、相互に情報交換を行うことでスキルアップを目指しています。ひとつでも多くの成功事例に学ぶことはス、タッフの育成にも必要だと考えています。

—自助グループの必要性をどうお考えですか?

院内例会をはじめ、自助グループは「生きたお手本」です。さまざまな立場の人たちから体験談を聴くことで、「止めていけるかもしれない」という希望が得られます。実際に経験されたからこそ、そこにはリアリティがあります。また、我々も自分自身が経験していない以上、体験者からの話を聴くことはとても大切です。まさしく、双方にとって「教育機関的存在」だと考えています。

—どういった患者さんが印象に残っていらっしゃいますか。

それは何より「予想外の展開」を見せてくれた人ですね。ああ、この人は再飲酒するだろうな、とか、最悪の場合命を落すかもしれないと思っていた患者さんに、何年かして再会することがあります。元気な様子でいるのを見ることは、本当に喜びです。同時に、無力さも感じます。自分の行っているアルコール医療がまだまだだと痛感します。
だからこそ、患者さんが断酒に失敗して再来院されても、怠けてて再飲酒しているのではなく、何かこちらに落ち度があるのではないか、と見直すように心がけています。アルコール依存症は、慢性進行性の病気ですが、回復できる可能性も十分にあります。失敗を繰り返すこともありますし、一筋縄ではいかないケースもありますが、諦めずに向き合ってもらいたいですね。

—最後に、ご家族の方へアドバイスをお願いします。

吉田 博信 先生

常々、我々が何をしたらいいか、無力さを感じています。ご家族の方が、相談や来院に際して以前よりハードルが低いとは思いますが、それでも十分なサポートができていないのが現状だからです。家族教室も現在、準備中ですが、従来とは違うご家族の気持ちが理解できるプログラムに取り組みたいと考えています。もっと敷居の低いところでアプローチできないか、それは必ずしも病院でなくても構わないので、無力さを補完できるものがないか、我々も日々努力を重ねていきます。
だから、どうかご家族の皆様も、すぐには理解されないと諦めないで、必ず理解できる援助者がいると信じて、そういった人を探す努力を忍耐強く続けていただければと願っています。



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