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院長 山崎 照光

生協さくら病院
院長 山崎 照光

生協さくら病院 外観

「アルコール関連問題で困った時はこの病院」と地域から頼られ、町の精神病院としての地位を確立している生協さくら病院。グループホーム、地域生活センターの立ち上げ、また平成24年には地域から要望が多かったサービス付高齢者向け住宅(要介護者や高齢の精神障害者用)の運用を開始するなど地域精神医療にも積極的に取り組んでいます。そんな生協さくら病院のアルコール医療について、山崎院長にお話を伺いました。

メッセージ

—生協さくら病院の特徴は何でしょうか。

精神科病院では、まだまだ閉鎖病棟が多いと聞いていますが、当院では患者さんの人権を尊重する意味で、1981年以来全病棟開放医療を継続しています。そして、東北地方で最初に久里浜方式のアルコール依存症の認知行動療法を取り入れています。さらに断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)などの組織の立ち上げを支援したり、家族教室を立ち上げるなど地域との連携を積極的に取り組んでいます。

—治療のポリシーを教えて下さい。

「その人らしく生きられるようにサポートする」ことです。患者さんそれぞれの生活歴や依存症になった経緯、理由を理解しながら治療を進めています。治療プログラムは断酒が基本ですが、節酒を希望される患者さんに断酒を強制することはしません。医師と患者さんが対等に向き合い、コミュニケーションを取っていくことで患者さんの断酒に対する姿勢が変わってくると思っています。冬は寒いので白衣を羽織りますが、夏は着ずにワイシャツで診察しています。患者さんやスタッフと対等・平等にお話できるように意識しています。

—山崎先生は、日本笑い学会にも所属されていますね。

なるべく患者さんとフランクに接したいと思っています。たとえば、「痛いところがある」場合には軟膏類を出しますが、「軟膏、何個ほしいですか?」とか、患者さんが「このへんが痛い」と仰ったら、「ああ、ここが痛いんですか。大腿(大体)このへんですか?」とか、回診の時にダジャレを言うこともあります。シャレが通じないこともありますが(笑)。

—一般的な治療プログラムはどのようなものですか。

初診では患者さんとじっくりお話をし、まず身体の検査をします。肝臓薬や抗酒剤、離脱症状を抑える薬などを処方し、1週間後に来院いただきます。この1週間断酒ができていれば薬物治療と通院で治療を進めます。通院のペースは人により違い月1回の方もありますが、平均すると2週間に1度来院いただいていると思います。
お酒を飲み続けている場合やご本人が希望される場合は、8回(8週)で1クールの入院治療を導入します。
入院治療のプログラムの中心となるのは3つ。①ハテナグループ(アルコール依存症についての基本的な学習)、②認知行動グループ、③SSC(Social Skills Club:ストレス度合いや性格傾向の検査をはじめ、対人関係、お酒を勧められた時の断り方などのトレーニング)の3つです。ハテナグループも認知行動療法グループも毎回宿題を出します。認知行動療法では、病気の理解やその時の気持ちなどを書いてもらい、書いた内容を発表してもらいます。発表することで自分自身の確認になり、別の患者さんの理解度や考え方を知ることができます。
デイケアの歴史は古く、20年以上になりますが、平日日中の大量飲酒を防ぐプログラムになっています。他にも月1回の家族会や自助グループのミーティングもあります。

—自助グループとの関係はいかがですか。

青森市内では数年前に断酒会がなくなってしまいました。その後、当院で院内断酒会を毎月第1土曜日に開催しています。弘前市の津軽断酒会とも連携しており、援助を受けています。
また、青森市内には2つのAAがありますが、そのうちの1つは当院に入院歴のある方が立ち上げたものです。これらの情報を患者さんに伝えて参加するよう勧めていますが、強制はしていません。

—来院される患者さんはどのような方ですか。

外来で通院されているのは月60〜80人くらいです。20代から80代まで性別も年齢もさまざまですが、多いのは40代から60代です。定年退職後、日中からお酒を飲んでアルコール依存症になるケースも多いです。
青森市内だけでなく、県内全域の医療機関から紹介を受けています。アルコール性肝硬変の末期、アルコール性認知症の患者さんもいらっしゃいますね。内科的に重症の患者さんは、あおもり協立病院に紹介しますし、外出して飲酒を繰り返す患者さんは閉鎖病棟のある芙蓉会病院に紹介することもあります。

—青森県のアルコール問題の現状について教えて下さい。

青森県は、日本酒換算で1日3合以上飲む多量飲酒者の割合が多く、2001年の統計では男性が全国1位、女性が8位でした。これは青森の平均寿命が全国でワースト1である要因の1つになっていると思います。
ところが、アルコール依存症患者のうち治療を受けている人は7.3%(2013年厚労省調査)で、ほとんどの人が専門治療を受けていないのが実情です。否認の病気といわれる病気ですのでご本人が治療を拒否することもありますが、内科の医師が肝機能障害だけを診てアルコールの専門機関につないでくれないという問題もあります。前述のとおり、自助グループが他県に比べて少ないことも問題です。

—これまでのご経験の中で印象深い患者さんはいらっしゃいますか。

70代の女性で、猫と一緒に生活保護を受けながら暮らしている患者さんがいました。訪問看護や往診を受けながら外来受診しておられたのですが、食道がんを発症して通院ができなくなりました。訪問看護に行った際、きちんと食事もできず衰弱していることがわかり入院を勧めましたが、「猫の面倒を見る人がいない」と拒否されたのです。本来であれば、病院はペット厳禁ですが、生死にも関わること、またその人の生きがいを取ってしまうことは出来ず、例外的に猫を連れて個室に入院していただきました。ペットと暮らす独居の高齢者が増えていますので、今後もこうした問題は起こると思います。

—最後に、ご家族の方へアドバイスをお願いします。

山崎 照光 先生

病院のパンフレットやアルコール依存症の自己チェックなどの資料を、それとなくご本人の目のつきやすいところに置いておくのはどうでしょうか。ご本人がそれを見て「自分はアルコール依存症ではないだろうか」と思って受診につながる場合もあります。さらに、ご家族だけでも断酒会や家族会に参加できます。ご家族がアルコール依存症という病気について知り、家族の態度が変わることで受診に結びつくこともあります。
また、ご家族も自宅ではお酒を飲まないようにすることも大切です。



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