Doctor's Voice

吉田 精次 先生

藍里病院
副院長 吉田 精次

  • 藍里病院
  • 〒771-1342 徳島県板野郡上板町佐藤塚字東288-3
  • TEL:088-694-5151 FAX:088-694-5321
  • http://www.aizato.or.jp/
藍里病院 外観

藍里病院は1980年の開院以来、徳島の精神科医療の発展に貢献してきました。2011年には公的な医療機関に準ずる施設として「社会医療法人」の認定を受け、精神科救急・急性期医療の取り組みをさらに進めています。また、多彩な医療・福祉サービスの連携により、こころの問題を持つ人たちに豊富な地域移行支援メニューを提供し、地域で「共に生きる」ことを目指しています。

メッセージ

—24時間365日の電話相談を受けておられますね。

パン工房ランベリー

2011年に「あいざと・こころの医療福祉相談センター」を開設しました。「こころの医療相談」、「くらしの相談全般」と、「いますぐ診察を」という精神科救急の相談を受け付けており、昨年は1年で1700件以上の相談がありました。ご家族や関係機関からの相談もありますが、患者さん自身からの相談が中心で、クリニックなどに相談できない夜間の相談が多いです。
また、以前から患者さんの地域社会への復帰や、自立を支援する各種事業にも取り組んできましたが、就労支援の一環として、2013年には「パン工房ランベリー」を開設しました。通院やデイケアの患者さんたちに働く場を提供しています。

—治療に対するポリシーを教えてください。

相談に来られた100%の患者さんの飲酒が“本当に止まる”医療サービスをしたいと考えて、日々研究しています。
世界の傾向を見ると、アルコール治療は外来治療が当たり前で、入院がメインの日本は遅れていると思っています。患者さんは入院することにすごく抵抗があります。ですので、私は基本的に入院は勧めません。一番重視しているのは、通院を継続できるかどうかです。仮に再飲酒したとしても、その後も通院を継続できるように最大限の努力をします。アルコール依存症は病気なので再飲酒もよくありますが、そこからどうリセットするかが重要です。

—入院しなくても、通院で治療ができるのですか?

最初から入院は勧めませんので、ご家族には事前にその方針について説明します。
まず、ご本人がどうしたいのかを訊きます。ほとんどの方は「自分でやめる」と言います。失敗するであろうことはわかっていますが、やってもらいます。治療プログラムに参加するかどうかも本人次第です。それで上手くいかなければ私から次の提案をするというやり方で、一歩一歩患者さんと共に進んでいきます。最終的に入院する方もいますが、その時点では本人が納得していますからトラブルは起きません。

—具体的な治療プログラムはどのようなものですか?

プログラムは心理教育がメインで、ビデオと勉強会があります。大事なのは勉強だけで終わらず、コミュニケーションなどのスキルアップの練習を積むことです。患者さんたちのボキャブラリーは少なく、とくに奥さんとの会話は「うるさい」、「黙れ」の2つくらいしかない人が多いです。極論すると、患者さんたちは自分のネガティブな感情を表現する言葉を持っていないために、酒を飲んでしまうのです。そのためにもいろいろなスキルを身につけてもらいます。
コミュニケーション・スキルアップセミナーでは、例えば退院後、酒に誘われた時に実際どう断るかなど、コミュニケーション能力を高めて、自分の意志をちゃんと言えるようになる練習をします。酒に手を伸ばさないようにするためには、いろんなスキルを開発して身につけていく必要がありますから、プログラムは患者さんによって個々に違います。

—家族向けのCRAFT(クラフト)プログラムとはどのようなものですか?

CRAFTプログラムは家族を支援して、家族が患者さんとどう対応するかを学ぶプログラムです。これによりまずは家族の負担を軽減し、本人を受診につなげることを目指しています。アルコール依存症は、本人は否認していて、家族が相談に来られることが非常に多い病気です。例えば「あんた、また酒飲んで!もう出ていって!」というような言い方をやめる、病院や治療といった言葉を避けて「相談に行く」という言い方をする、「一度だけ、試しに」と誘うなど、具体的な場面を想定して練習していただきます。ご家族にまずこのCRAFTプログラムを受けていただくと、7割は治療につながります。非常に高い数字です。CRAFTプログラムが日本中の治療施設に広がれば、アルコール依存症治療が大きく変わると思っています。

—自助グループとの関わりはどのようになっていますか?

自助グループへの参加は重視しています。徳島でアルコール治療を開始した当時の先生方を中心に断酒会が誕生した歴史もあり、開院以来30年、院内例会の開催など一貫して支援を続けています。AAにもメッセージに来てもらっています。
ただ、自助グループに行けばお酒が止まるというのも正しいのですが、断酒会に定着してお酒をやめる人は、当院では100人のうち1人くらいというのが実情です。この状況はまずいので、自助グループとの関係も太くしながら、定着しない人がやめられる方法も用意する必要があります。いろいろなお酒のやめ方の選択肢と間口を広げていかないと、皆さんにとっての100%断酒は達成できません。

—他施設との医療連携はどのようになっていますか?

同じあいざと会には、徳島県内にさらに2施設ありますので、当院の医師が出向いて診療しています。他施設においては、他の病院に移ったケースワーカーが橋渡しをしてくれるケースや、内科からの紹介・相談も増えてきました。本格的な連携はこれからですが、地道に作っていこうと考えています。

—最後に、ご家族の方へアドバイスをお願いします。

吉田 精次 先生

本人を連れて行かないと診てもらえないと思っている方が多いですが、それはとんでもない誤解です。まずご家族が相談に来てほしいと思います。そしてCRAFTを学んでほしいです。このCRAFTプログラムでスキルを身につければ話し方が変わり、関係性が変われば、それだけで患者さんは病院に行く気持ちになります。とにかく無理やり連れてこようとせず、ご家族が相談に来てほしいです。



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