Doctor's Voice

佐藤 晋一 先生

京都いわくら病院
佐藤 晋一 先生

  • 京都いわくら病院
  • 〒606-0017 京都市左京区岩倉上蔵町101
  • TEL:075-711-2171 FAX:075-722-7898
  • http://www.toumonkai.net/
京都いわくら病院 外観

京都・洛北の「岩倉」は、平安時代から心の病を治す保養所として知られた精神科治療発祥の地です。そんな四季折々の美しい自然と、歴史ある落ち着いた環境に恵まれた京都いわくら病院は、精神障害者の早期社会復帰に貢献してきました。「人と人が人間として出会う」ことを目標に掲げ、温かい精神医療を実践されています。

メッセージ

—京都いわくら病院の特徴は何でしょうか。

京都府下では唯一、アルコール依存症の入院治療プログラムを実施しています。アルコール病棟は40床ですが、2014年5月に女性患者さんの部屋も作りました。全国に先駆けて開放医療に取り組んできたのも特徴で、ご本人の同意に基づく入院治療を原則としています。

—治療の流れ、入院日数はどれくらいですか。

京都いわくら病院 廊下

入院治療のプログラムは原則として3ヵ月ですが、2回目以降のリピーターの方には1ヵ月、2ヵ月のプログラムも用意しており、平均すると65日くらいです。会社勤めの方など、3ヵ月入院することが難しい場合は個別に対応していますが、治療効果を考えるとやはり2ヵ月は必要かと思います。
入院後5日間は主に解毒治療。続く3週間はアルコール依存症について正確な知識を学んだり、ミーティングに参加するなどの各種院内プログラムです。3週間を過ぎるとこれに加えて院外の地域の自助グループに参加していただきます。退院後はいわゆる断酒の3本柱である抗酒剤の服用と通院、自助グループに参加しながら断酒を続けていただきます。9割以上の患者さんは、退院後には元の地域での生活に戻っておられます。

—具体的なプログラムを教えて下さい。

プログラムはスタンダードな久里浜方式と言われるものです。メインになるのは集団精神療法で、酒害教育やアルコール依存症についての正確な知識を持っていただくための心理教育を大切にしています。ウォーキングやスポーツレクなども取り入れています。野外活動や運動は、しらふで体を動かして今後の生活に備えると同時に、お酒がなくても楽しめることを実感していただくためにも重要です。
アルコール依存症治療は医師だけでできるものではなく、看護師、精神保健福祉士、臨床心理士、管理栄養士、作業療法士らが1つのチームとして患者さんの回復に向けた関わりをしています。外部の自助グループからも「メッセージ」を運ぶという形で関わっていただいています。OBなど回復者との交流も含めて、色々な人が回復をサポートしています。

—自助グループに参加したくないという方はおられませんか。

最初はやはり抵抗があって、自助グループを嫌がられる方もおられます。酒を飲み続けている間に人間関係がどんどん切れて孤立してしまい、自分の殻に閉じこもっていたため対人関係に自信が持てなくなっている方が非常に多い。だから入院での集団生活や人が大勢集まる自助グループがしんどく感じます。 でも自助グループに出席している内に慣れてきます。それに周囲も同じしんどさを抱えていることがわかり安心できます。何よりも酒なしで生活している多くの回復者と出会うことによって自分も回復できることが信じられるようになることが大きい。

—20回以上地域の自助グループに出席することが退院の条件とか。

断酒生活の具体的なイメージをつかんでもらうためにも、自助グループは必要です。院内にも断酒会がありますが、断酒会は地域ごとに支部がありますので、お住まいのある地域の例会など、院外の地域の自助グループに20回以上参加してもらうようにして、その日は自宅に泊まっていただきます。そのため、入院生活は結構忙しいと思いますが、これは退院後の生活に向けた練習を入院中から始めることにもなるんです。

—来院される患者さんの傾向や特徴はありますか。

患者さんの多くは地域の精神科クリニックの紹介や、肝臓を含めた消化器疾患など内科からの紹介です。あとは酔っぱらっての怪我、転倒や外傷など外科からの紹介も多いです。
アルコール依存症患者80万人のうち、専門機関にかかっているのは5%ぐらいだと言われています。まだまだ認知されておらず、回復できることもあまり知られていません。内科や救急外来など一般の身体科で抱え込んでいる方が多いはずなので、こうした医療機関との連携をどうしていくのかというのが今後の課題です。

—これまでのご経験の中で、印象深い患者さんはいらっしゃいますか。

何度も失敗して、6回目の入院でようやく断酒の道につながったという方がおられます。40代前半で初めて入院した時は否認が強くて、周囲にも職員にも当たり散らすような方でしたが、失敗を繰り返しながら10年くらいかけて回復していったケースがあります。きっかけは家族の励ましでしたが、やはり自助グループの仲間のサポートが大きかったですね。諦めないことが大切だと教えられました。

—最後に、ご家族の方へアドバイスをお願いします。

佐藤 晋一 先生

患者さんご本人が受診したがらないケースは結構あると思いますが、当院では家族相談を設けていますので、まずはご家族だけでも受診してください。ご本人に自分の問題を早く気づいてもらうために、家族はどうすればよいのかもアドバイスしています。
他に、家族教室に参加していただくのもよいと思います。当院でも開催していますが、断酒会やAAなども家族のためのミーティングを行っています。ご本人が受診に至らないご家族も参加していただけます。
アルコール依存症は、飲み続けた期間が長くなればなるほど、健康や仕事、家族など、大事なものを失っていく病気です。抱え込まずに、まずは一番相談しやすいところに連絡してみてください。



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