Doctor's Voice

田 亮介先生

駒木野病院 アルコール総合医療センター
センター長 田 亮介

  • 駒木野病院 アルコール総合医療センター
  • 〒193-8505 東京都八王子市裏高尾町273
  • TEL:042-663-2222
  • http://www.komagino.jp/
駒木野病院

駒木野病院(八王子市)は、古くから東京都西部のアルコール依存症治療における中心的な施設です。「心のこもった、質の高い精神医療」を基本理念に掲げ、急性期から慢性期まで幅広い精神疾患に対応しています。2013年6月には、多様化するアルコール関連障害に対応する新しい枠組みとしてアルコール総合医療センターが開設されました。

メッセージ

—駒木野病院は、開設から90年の歴史をお持ちですね。

駒木野病院

街中の病院として地域の方との交流や関係をとても大切にしてきました。「地域に駒木野病院があって良かった」と思っていただける存在でありたいと思っています。「こまぎのフェスティバル」は病院の広場を会場にして、高校生のダンス、患者団体のフリーマーケットや地域の皆さんの模擬店など、子どもからお年寄りまで多くの参加者に楽しんでいただいています。消防訓練にも地域の皆さんに参加していただきますし、私たちが保健所で認知症などの講演をさせていただくこともあります。地元の自治会にも職員が参加し、日頃から地域と情報交換しています。

—患者さんとの接し方で心掛けておられることはありますか。

病院理念に掲げているように「心をこめて」治療に当たることですね。精神疾患は長期にわたる医療支援が必要な方が多いので、患者さんに信頼していただける接遇や治療スキルなど、専門職の私たち個々人が、個々の能力を高めて治療に当たることを心掛けています。
また、多角的な観点から知識を高めるような職員研修も行っています。例えばキャビンアテンダントなどの専門家による接遇研修や、弁護士の先生による行動制限の法的な意味や患者さんの人権、医療事故についての講義などを実施しています。

—新設されたアルコール総合医療センターの目指すものは何でしょうか。

アルコール総合医療センター

センターでは入院と外来のプログラムの有機的な融合や地域連携、入院患者さんの個別相談、医療スタッフへの支援・アドバイスを行います。患者さんにはそれぞれの事情に合わせた様々な病棟に入院していただきますが、このセンターでは、アームズ(ARMS:Alcohol Rehabilitation Medical Staffs)が中心となってリエゾン的に担当医や看護師のサポートをし、患者さんの相談やフォローを行います。このように従来のアルコール専門病棟の枠組を脱して、病院全体としてアルコール医療に取り組むために、外来・入院・リハビリ・地域連携活動を専属スタッフが一本化して担う新しいシステムを作り、COPRA方式(Comprehensive Program of Rehabilitation for Alcoholism)と名づけました。精神科病院におけるアルコール医療の新たな形を提案したいと考えています。

—治療プログラムの特徴や独自の内容はありますか。

一般的には、外来治療と入院治療に分かれています。入院治療は、1〜2週間の解毒期、8週間の断酒教育とあわせて約10週間のプログラムです。
プログラムには入院者だけでなく、外来の患者さん、家族や未受診の方、一般の方が参加できるものもあり、できる限り入院と外来のプログラムに垣根なく参加できるようになっています。
外来プログラムの一環としては、2013年6月からアルコールデイケアを始めました。退院後に利用される方が多いのですが、通院で生活のリズムを作りながら、断酒を目指そうと外来の段階で利用しておられる方もいらっしゃいます。当院では週3回という形で実施していますが、デイケアのない日は地域の自助グループに通うなど、ご本人とスタッフで相談・工夫することが最良の回復の道と考えているからです。
また毎月1回、誰でも参加できるアルコール講習会を開催しています。これは保健所の相談やインターネットの情報を見るだけに留まっておられる方や、1人で抱えて悩んだまま未受診の方も多いので、そんな方々に向けて門戸を広げるきっかけを作りたかったのです。
ご家族だけでも参加していただければ、家族会につながってご家族自身の精神的な健康度が改善することもありますし、ご家族の対応が変われば、ご本人が自分の問題に気づき始めることもあります。実は近隣のクリニックのソーシャルワーカー、保健所、薬局、行政の方たちも勉強のためと参加してくださり、結果的に顔の見えるつながりもできたことは良かったですね。

—サービスステーション駒木野はどのような役割をしていますか。

サービスステーション駒木野(SSK)は、患者さんと病院、地域を結ぶ支援窓口になる部署です。地域でのネットワーク作りや講演会の依頼を受けるなど病院の外と中をつなぐ役割を担っています。ソーシャルワーカーや看護師らが、地域包括支援センター、作業所、保健所、行政窓口、クリニックなど地域の様々な機関や、医療機関に出向いています。そこで、身体的な治療を医療機関にお願いする際の連携をスムーズにするための情報交換や、駒木野病院に対して何か不満がないかといった情報収集もしています。同時に、病院内でもSSKを利用して上手く連携していくような、縦糸・横糸的なつながりを持っています。

—自助グループとの関係はいかがですか。

自助グループの草分け的なグループである駒木野懇談会(外来患者、入院患者、家族と病院スタッフが参加)をはじめ、治療プログラムには複数のグループに協力していただいています。また、年に2回定例会を開催し、断酒会やAAなどの自助グループに病院の現状の説明や患者さんの声を伝えて、自助グループからも病院への要望を聞く話し合いの機会にしています。

—来院される患者さんの特色や傾向などはありますか。

全国的な傾向ですが、団塊世代の方が続々とリタイアされる時期ということで高齢の初診の患者さん、それから女性の初診の患者さんが増えています。
身体科の医療機関や保健所などの紹介で来院される方もありますが、不眠症で受診したらアルコール依存症の可能性があると言われたとか、うつ病の方でお酒の問題が顕在化してきたなど、クリニックでアルコール専門治療を勧められて来院されるケースも多いです。

—最後に、ご家族の方へアドバイスをお願いします。

田 亮介先生

ご家族が医療機関に来ることによって始められることもたくさんあります。1人で抱えず、諦めないで、まずは病院に足を運んでください。家族相談の他にも各種勉強会や家族会もあります。大事なのは諦めないことです。
なかには、ご本人がリビングでご家族が持って帰ってきた病院のパンフレットを見つけたことから会話が始まり、依存症の話なんて怒るだろうと思っていたのが、「病気」というと案外話ができて初診につながったというケースもあります。不眠やうつ、身体の不調など、ご本人も何かしら困っているものです。お酒の問題はちょっと横において、ご本人が困っていることを一緒に考える。そのために受診してみようと誘ってみてください。お越しいただければ、そこから一歩前進すると思います。



患者さんを支える方々へ