Doctor's Voice

小池理事長

船橋北病院
理事長 小池 健

船橋北病院

千葉県のアルコール依存症治療の中心的な施設である船橋北病院は、全国的にも珍しい女性専用個室も備えた女子病棟を2013年2月にオープン。女性の患者さんが受診・受療しやすい環境が整備されています。ここには、全国にまだ16人しかいない精神科認定看護師(薬物・アルコール依存症看護領域)がおり、専門性の高い看護が行われています。

メッセージ

—体育館のある施設は珍しいですね。

医療福祉相談室 主任 木村友一さん

開放的な治療環境づくりをめざしています。精神保健福祉法に基づく任意入院という法的な問題もありますが、退院後もお酒を飲まないで生活していくためには、ご本人の生活環境に近い環境での訓練が必要です。体育館では身体測定や体力面の回復を測り、できる範囲でアメニティも充実させています。宿泊型の生活訓練施設「ひまわり苑」も併設しています。

—患者さんへの接し方で心がけておられるのは、どんなことですか。

患者さんとはできるだけ対等の関係をつくっています。もちろん、医師と患者さんという関係を利用して治療を進める面もありますが、気持ちの上では対等な人間同士ということです。
また、質の高い治療を目指して、症状に関わらず全体的な依存症の治療を行っています。依存症とまでは言えなくても、ご家族が心配して一般科からの紹介で来院される場合には節酒指導を行います。いろんな患者さんに幅広く個別に対応し、退院後も治療を継続しやすいよう工夫しています。

—具体的な治療プログラムを教えて下さい。

入院は基本的に3ヵ月です。外来治療は独自のアルコールデイケアのプログラムを、月曜から土曜まで1日6時間実施しています。利用日や内容も個別対応なので、仕事を休める日だけ利用するとか、退院してから職場復帰までの2ヵ月限定とか、定年後は毎日など、それぞれのニーズに合わせてケースワーカーと患者さんとで相談しながら利用していただいています。
最初はアルコールの害について医師や看護師だけでなく、薬剤師や栄養士など多職種の立場で講義します。次に再飲酒予防のための認知行動療法や集団精神療法のミーティング、体力作りのためのスポーツ、レクリエーション的なものとして華道やお菓子作り、料理教室などもあり、自由に組み合わせて選んでいただいています。プログラムは患者さんの個別の問題と照らし合わせて必要なものを選択する形をとり、患者さんの自主性を大事にしています。

—女性の患者さんのための配慮や環境づくりが進んでいますね。

女性の患者さんは全体の2割くらいですが、30~40代ぐらいの方が増えてきています。女子病棟には個室も含めて女性だけが使える部屋が13床あり、最初は入院したくないという気持ちが強い方でも、見学すると「この環境ならやってみよう」と入院治療を選ぶ場合もあります。また、男性の医師には話しにくいという場合は、事前に連絡をいただければ、女性の医師が診察するよう調整させていただきます。
女性の中にはDVを受けていたり、男性から性的なことでトラウマになっている方もいらっしゃるので、安心して話していただくために女性だけのミーティングも実施しています。

—自助グループとの関係はいかがですか。

千葉には自助グループは多いと思います。当院が以前実施した調査からも、断酒の継続には自助グループとのつながりが深く関係していることがわかっていますので、AAや断酒会など、さまざまな自助グループと連携して、ミーティング会場も提供しています。私たちも、まずは自分で行かないと患者さんに自分の言葉で伝えてお誘いできないので、勤務外でミーティングに足を運ぶようにしています。
患者さんは治療プログラムと併行して、自助グループのミーティングに参加されます。

—これまでのご経験の中で、印象深い患者さんはいらっしゃいますか。

退院して自助グループでも中心的な役割になっていた方が、家族の会で体験談を話してくださったのですが、その話を聞いた方が先日、飲んでいる本人と別離をするという選択をされました。体験談で「本人が飲む自由を選んでいるなら、家族は別れる自由もある」という言葉を聞かれたことで気持ちが楽になり、決断を後押ししたようです。回復された方のメッセージが、他の人の人生の選択や回復に役立っていることを実感しました。

—最後に、ご家族の方へアドバイスをお願いします。

小池理事長

当院では月2回家族教室を開催しており、30人くらいが参加されています。2回のうち1回は、親、配偶者、子どもの3つの立場にグループ分けして立場別のミーティングを行っています。立場によって患者さんとの距離感や辛さが違うので、より共感しあえることも多く、継続的な参加者が増えています。
アルコール依存症はご本人だけの病気ではなくて、周囲の人、家族にも影響を与えて共依存関係になったり、振り回されてご家族が被害にあったりします。周囲が知らず知らずのうちに、病気を進行させている場合も結構あるものです。もしもお酒の問題がありそうだと気づいたら、まずは正確な知識を持つために勉強することが大切です。同時に、ご本人に振り回されてご家族が不健康になってしまっていたら、その不健康なところをまず癒やして治す必要があります。そうしないと、ご本人に良い対応ができません。
その場合はまず病院に相談してもらいたいです。病院に相談しにくいなら自助グループでもいいし、保健所や精神保健福祉センターなどの公的な機関でもいいと思います。ご家族にもアルコール依存症への否認があるかもしれませんが、「おかしいな」と思ったらいつでも相談してください。身体の合併症だけでなく他の病気を合併している場合もありますし、受診は早いほどいいと思います。

●精神科認定看護師

泉田 美香さん

アルコールデイケア 主任
泉田 美香さん
新患の患者さんの半分以上は何かしらアルコールの問題を抱えておられます。アルコールデイケアは幅広い方を対象にしており、アルコール依存症と診断されなくても、アルコールに問題を感じている方やちょっとお酒の飲み方を変えていきたい方などにお勧めしています。プログラムは、1人ひとりの患者さんの個別の問題と照らし合わせて、必要なものを自分で選択していただくようにしています。



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