Doctor's Voice

竹下先生

竹下粧子クリニック
院長 竹下 粧子

竹下粧子クリニック

大分市の中心街で、外来治療専門施設としてアルコール指導を行う竹下粧子クリニック。アルコールの問題や摂食障害について女性だけで話せる「女性の集い」や更年期の健康相談を行うなど女性患者が抱える問題にも心を配る院長の竹下粧子先生にお話を伺いました。

メッセージ

—アルコール関連問題の現状を、どのように見ておられますか。

うつ状態や不安障害で精神科を受診されている患者さんには、本当は奥にアルコールの問題が隠れていたり、アルコール依存症を合併していることが多いと感じています。飲んでいない時はあれこれ気遣いをする方だと、職場や周囲の方が気づかない、本人も否認する、すると医療従事者でさえも気づかないこともあります。アルコール依存症がどんな病気かという情報が十分伝わっていないのです。
たとえば、断酒されている方がノンアルコール飲料を飲むと再び依存の回路に引き戻されてしまうのですが、飲食の席で「ノンアルコールだから大丈夫だろう」と勧められることも多いと聞いています。アルコール関連問題の情報が、患者さんやご家族はもちろん、医療従事者にも不足していると感じています。

—治療において大切にしていることは、どんなことですか。

まず、患者さん自身を尊重することです。回復に向かう力は誰もが持っているので、そこに意識を向けるようにしています。アルコール依存症の回復にはとても時間がかかるので、今できることを患者さんと一緒に考えるようにしています。たとえば、自助グループの例会には出席できないけれど、クリニック内の集まりなら出席できる、集まりには出席できないが薬は服用できる、今お酒を止めるのは難しいが1ヵ月後の来院はできるなど、できることを少しずつ広げていきます。諦めないで取り組み続けることが大切だと考えています。依存症は回復できる病気です。問題はご本人ではなく依存症という病気が問題なのであって、誰かが悪いわけではないのです。
また、当院では女性の方が、女性だけの中で話せる場所という「女性の集い」などもプログラムとして用意しており、女性が治療を受けやすい環境作りにも配慮しています。

—外来治療専門の施設として、地域と連携しながら治療をしておられますね。

私一人では無理でも、スタッフや関係者が一体となって治療に取り組むことで状況を変えていけると思っています。いろんな方が関係してくる病気なので、入院や訪問看護が必要な場合は対応可能な病院に相談しますし、地域の作業所や、保健師さん、児童相談所など行政機関の方とも連絡を取っています。

—自助グループとの関係はいかがですか。

竹下粧子クリニック 待合室

自助グループとの関係はとても大切にしています。スタッフ自身が例会に参加することもありますし、患者さんやご家族に参加を提案、同行することもあります。
私はおそらく、大分ではいちばん自助グループの例会に参加している医療従事者だと思いますが、続けて参加していく中で様々な発見があります。初めて例会に参加するのは不安でいっぱいだと思いますし、2、3回参加して自分に合わないと感じて参加しなくなる方もいらっしゃいますが、10回、20回と続けて参加することで見えてくること、肌で感じてくることもあるのです。
アルコール依存症の回復には、アルコール依存の回路とは違う、新しい回路を作ることが大切です。そのために、自助グループやアルコール依存症専門医療機関に行くという新しい行動は役立つと思います。ご家族がまず参加して雰囲気を伝え、患者さん本人を「行ってみよう」という気持ちにさせることも重要です。

—患者さんとの関わりで、印象的なことはありましたか。

アルコール依存症は、患者さんが自身の問題に向き合うことが必要な病気です。私は日頃から自助グループの例会に参加していますが、断酒を続けられている患者さんを見ていると、患者さん自身のものの見方や考え方が徐々に変化される様子が身近に感じられます。また、自分が回復するだけでなく、同じ仲間や困っている方のために役立ちたいという気持ちが芽生え、自助グループの活動に積極的に取り組まれるようになった方など、人間的に成長なさっているお姿を目の当たりにすることもあり大変有り難い気持ちになります。その場にいると心が洗われるような時間が持てて、私自身の診療へのモチベーションにもつながっています。

—最後に、ご家族の方へアドバイスをお願いします。

竹下先生

はじめにお話ししたようなアルコール問題の情報不足は、ご家族にもあるように思います。まずご家族の方自身が相談機関、専門医療機関、自助グループに行くことで状況を変えていくことができますが、その一方で本人を病院に連れて行こう、本人を変えようとエネルギーを使って、ご家族が疲れてしまっている気がします。
ですから、まずはアルコール依存症専門施設、自助グループ、保健所などどこでもいいので、相談しやすいところに問合せしてください。アラノンという家族の方だけの集まりもあります。すぐに治療を始められなくても、一歩前進できるはずです。どういったところに相談機関があるのか、アルコール依存症がどんな病気なのか、将来どうなるのかといった情報を得るだけでもとても意味があると思います。



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