Doctor's Voice

山本先生

大分友愛病院
院長 山本 亨

  • 大分友愛病院
  • 〒877-0062 大分県日田市大字上野1−1
  • TEL:0973-23-5151 FAX:0973-22-3040
大分友愛病院

1981年にアルコール依存症治療の専門施設として開設された大分友愛病院は、大分県のアルコール依存症治療の中心的な医療施設です。断酒会も病院設立に関わり、現在も自助グループと強く連携しながらアルコール依存症治療が行われています。

メッセージ

—設立当初はアルコール依存症の患者だけを受け入れておられたのですね。

大分県にアルコール依存症の治療ができる医療機関がなかった時代に、アルコール依存症に特化した精神科として、初代院長と大分県断酒会連合の役員が設立したのが大分友愛病院です。今は認知症の治療病棟もありますが、断酒会の役員が理事として病院運営に関与しており、断酒会との関わりが強いのが特徴です。

—来院される患者さんはどのような方ですか。設立時と比べて変化はありますか。

基本的には大分県全域と、福岡県南部からも患者さんが来られます。患者さんは圧倒的に男性が多く、9割が男性です。年齢は40〜50代が中心で一般的な傾向と大きな違いはありませんが、高齢者の方が若干増えています。
昔は家族が無理矢理連れてきたという話が多かったのですが、最近はご自身の意志で来られる方が増えました。はっきり認めてはいなくても、自分のお酒の飲み方はまずいんじゃないかと薄々感じていて、周囲に勧められて来たという人が増えてきたような気がします。

—治療のポリシーや患者さんへの接し方など、心がけておられることはありますか。

断らないことです。当院は大分県で最初のアルコール依存症治療を専門とする医療機関として開設しました。それなりに知名度は有ると思いますので、この病院で断ってしまうと患者さんは行き場がなくなってしまうのです。相談に来られるということは、何かお困りのことがあるわけですから、できるだけ受け入れていきたいと考えています。
ご本人が否認している場合は受け入れが難しいこともありますが、仮に患者さんを受け入れられなくても、ご家族の相談や対応は必ずさせていただくようにしています。

—治療プログラムはどのようなものですか。

プログラムは久里浜式のARP(アルコール・リハビリテーション・プログラム)に認知行動療法や動機付け面接を組み入れています。
設立の経緯もあり、自助グループとの関わりが強いのが特徴です。アルコール依存症治療は入院治療だけで完結するわけではありません。退院後の治療継続が鍵で、外来通院と自助グループへの参加が継続できる人ほど断酒率が良いのです。そのため各地域の自助グループとしっかりつながっていただくために、夜間の例会に病院車で患者さんを送迎するような形でスタッフが同行したり、断酒会の例会の会場として当院の一室をお貸ししたりもしています。院内例会には県内全域の断酒会の方が来られますので、患者さんやご家族などに、1度は地元の断酒会のメンバーと顔を合わせる機会を作っていただけるようにしています。
片道小一時間かかるような断酒会に同行することもありますが、スタッフにはいつも「患者の立場になって考えなさい」と話しています。

—印象深い患者さんはいらっしゃいますか。

内科医として働いていた頃、吐血して入院を繰り返す女性がいました。アルコールの問題があるらしいとは判っていたのですが、当時の私はアルコール依存症治療の経験が乏しく身体的な治療だけしていたのです。その方に「絶対お酒はやめますから、どうか助けてください」と言われた時はすでに手遅れで、結局肝不全で亡くなられました。
専門医療機関との連携がもう少ししっかりできていればこういう方を減らせるし、アルコール依存症治療につなぐことができたのにと、その時のことをよく思い出します。身体的な治療だけではアルコール依存症は回復できない、お酒をやめないと解決しないことをもっと広く知っていただきたいと思います。

—最後に、ご家族の方へアドバイスをお願いします。

山本先生

ご家族が自分たちだけでどうにかしようと抱え込んでおられる傾向が、まだまだ強いと思います。しかし、アルコール問題を家族だけで解決するのは難しいものです。本人が病院に行かないと駄目だと思われる方が多いのですが、ご家族だけの相談も受けていますし、病院が難しいなら行政でも、自助グループでもいいので相談してみてください。それが変化のきっかけになると思います。



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