Doctor's Voice

村上先生

独立行政法人国立病院機構琉球病院
前院長 村上 優

  • 〒904-1201 沖縄県国頭郡金武町字金武7958-1
  • 代表TEL:098-968-2133 FAX:098-968-2679
  • http://www.ryu-ryukyu.jp/
琉球病院

沖縄県のアルコール依存症治療の中心的な医療機関として、相談から入院・通院まで一貫した体制で治療を提供しているのが琉球病院です。ここでは、「もっとも大切なひとは医療を受ける人」を基本理念に、アルコール・薬物をはじめとする精神科専門医療が行われています。

メッセージ

— 琉球病院のアルコール依存症治療の特徴は何でしょうか。

琉球病院 看板

沖縄県はお酒に寛容な土地柄ですが、飲酒運転による人身事故が全国ワースト1位、死亡事故も全国平均を遥かに上回っている状況です。また、アルコール性肝疾患や自殺の問題など、沖縄特有の文化や家族背景から生じるお酒による問題が顕在化しています。
琉球病院は那覇市内から車で1時間ほどかかるので「気楽に相談に行こう」という病院ではありませんでした。病院としても患者さんの来院を待つのではなく、地域の医療機関や行政職員と連携して、とにかく早くアルコール依存症治療に介入できる風土作りに力を注いでいます。

— 早期介入を目指して地域への情報発信や、各種機関との連携を進めておられるのですね。

当病院のホームページやアルコール依存症に関わる小冊子を作成したり、沖縄県が抱えるアルコール問題や最新情報などを地元の新聞等で情報発信しています。
4年前からは、アルコール関連職種地域研修会を始めています。保健師さんをはじめ、福祉事務所などの関連施設や一般クリニックのスタッフなど、1回あたり10人前後が集まって年に4回くらい研修会を開催しています。この研修会は、困ったときに相談できる関係をつくるために、少人数制で実施しており、早期介入で問題飲酒を減らすHAPPYプログラムの研修も行っています。その結果、地域の援助職の方々との連携ができつつあり、アルコール問題への関心が高まってきました。

— 患者さんへの接し方や、治療の考え方について教えて下さい。

村上先生

まず、本人のモチベーションを高めていくことが必要であり、動機づけ面接が最初のアプローチになります。大多数の方は、しぶしぶ連れてこられるので、ご本人のモチベーションがどこにあるのかに焦点を当てると、個人個人に適したオーダーメイド治療となります。たとえば、認知機能に問題のある高齢の方には看護師の丁寧なケア、摂食障害等の複数の依存症が合併している若年の方には心理アプローチを重視するなど、ご本人の課題に応じて個別に介入していきます。

— 治療プログラムは、具体的にはどのようなものですか。

琉球病院 冊子

「回復の羅針盤」という小冊子をお渡しして、ご本人やご家族に治療内容をしっかり理解していただいてから治療に入ります。まずは外来で経過を見て、外来では断酒がうまくいかない場合は入院を提案します。入院の場合、最初の1週間くらいの初期段階は主に身体的な回復が中心です。
その後、認知行動療法を中心としたプログラムだけでなく、SST(生活技能訓練)や集団療法、レクリエーションや園芸療法、自助グループへの参加などを複合したプログラムを行います。お酒を断る訓練には生活シーンを想定したロールプレイングを採り入れていますが、できるだけ沖縄県の生活スタイルに合わせたものにしています。
医師、臨床心理士、作業療法士、薬剤師等の多職種によるチーム医療で取り組んでいますので、家族介入もソーシャルワーカーが専任することもあれば、医師が引き継ぐこともありますし、入院中は看護師も関わるなど丁寧に行っています。
また自助グループには、入院時から参加してもらうことを原則にしています。

— 来院される患者さんはどのような方でしょうか。

地域連携を進めていますので、精神科ではなく、一般内科などからの紹介が多いと思います。他には冊子やホームページの情報を見て相談に来られるケースや、口コミや自助グループからの紹介もあります。それから、家族の相談から始まるケースですね。
実は、沖縄県は女性の患者が多く、若年者では男性より女性の方がアルコール依存の頻度が高いという調査結果もあります。全国的に患者さんの男女比は5対1と言われていますが、沖縄県は女性が約3分の1です。

— 最後に、ご家族の方へアドバイスをお願いします。

琉球病院 風景

困ったらまず相談することです。病院が難しければ保健所でも、役場や生活保護の窓口でもいい、どこかに相談して、援助職とのつながりを持って欲しいと思います。



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