Doctor's Voice

辻本先生

ひがし布施クリニック
院長 辻本 士郎

ひがし布施クリニック

外来治療のみのアルコール専門外来として20年前に開設されたひがし布施クリニックは、改札口から徒歩3分という賑やかな駅前の一角にあります。ここでは「ひなたぼっこのような居心地のいいクリニック」を理念に掲げ、地域資源のネットワークを活かした治療が実践されています。

メッセージ

—入院治療と、地域での外来治療の違いは何でしょうか。

ひがし布施クリニック内①

入院治療では、入院中は優等生でも退院した途端飲んでしまうというようなギャップが生じることもありますが、外来治療の場合は日々がお酒への渇望との闘いです。そうした日常の環境の中で行う外来治療では、患者さんのライフスタイルに合わせて治療ができ、日常生活の中で長期にわたっての断酒支援が行えます。また、行政や就労支援のNPOなど他機関とも連携した地域ぐるみのケアや、訪問看護で家に入って日常生活の改善に取り組むなど、ふだんの暮らしに寄り添う支援をすることができます。
アルコール依存症の治療は医師だけでできるものではありません。患者さんの多くが生活面での問題を抱えていますので、当院ではソーシャルワーカー8名、看護師8名をはじめ、臨床心理士や栄養士らも加えてチーム医療に取り組んでいます。受付スタッフの笑顔を励みに通院している方もいます。

—治療プログラムは具体的にはどのようなものですか。

ひがし布施クリニック内②

通院の継続、抗酒剤の服用、自助グループへの参加を3本柱に、月曜から土曜まで毎日、6週間の通院が基本です。その中でも特に重要なのが毎日のミーティングで、断酒教育や疾病教育を行いますが、ここが患者さんの出会いの場にもなっています。「あの人、顔色悪いな」、「お前、もっと悪いで」といった患者さん同士の関係からの気づきや学びは、専門家の言葉より有益なこともあり、ここから次の治療につなぐ雰囲気を作り、自らがお酒を止めたい気持ちを援助するのが医師やワーカーの役割です。入院を勧める場合もありますが、どんな選択肢であっても本人が納得していると治療効果も向上します。

—来院される患者はどのような方でしょうか。

辻本先生

地元の東大阪市と隣接の八尾市、大阪市が中心です。自転車で通院する方も多く、地域密着型のクリニックですね。入院施設ほど高齢の患者さんは増えておらず、30代から50代の方が多いです。最近は女性の患者さんも増えています。内科からの紹介がいちばん多く約3割ですが、最近は自身でインターネットを見て来院する方も1割ほどおられますね。
「入院しなくていいなら」と自主的に来院する人が多く、無理やり連れてこられる人は少ないです。いずれにしても通院という敷居の低さが、早期治療につながっていると思います。当院では始めに患者さんと治療契約を結びますが、8割くらいは契約を結んで治療を始めることに成功しますね。
治療を中断して、自分でうまく飲もうと頑張ってみたものの1人では無理で、「やっぱり止めたい」と再来院される方も多いです。

—自助グループとの関係はいかがですか。

近くでほぼ毎日のように例会やミーティングが開かれており、治療を開始して早い段階から行ってもらいます。ある調査では自助グループの断酒会やAA(アルコーホーリクス・アノニマス)にも参加していない方の場合、6年後の死亡率は53%、参加していれば8.5%まで減るというデータがあるのですが、これを見せて「生きていたいなら参加しないとアカン」と言います。中には腰が重い方もいますが、多くの患者さんが参加していますので「あの人もいるから」と勧めたり、余裕があればワーカーが一緒に行くこともあります。

—家族相談や家族ミーティングも実施しておられますね。

医師

入口は、無料の電話相談です。はじめはワーカーが相談をお受けしますが、ご家族やご本人だけでなく、福祉施設や行政機関からも多くの相談があります。ここから、必要な場合は家族相談やご家族向けのプログラムにつなげています。

—悩みを抱えておられるご家族にアドバイスをお願いします。

まずは、イネイブリング(飲酒を可能にし、助長すること)など間違った対応をしないことや、家族が精神的に安定していることが重要です。次に治療を始めるタイミングが大切です。お酒を上手に飲めている時は病院に足が向かないものなので、酔って転んで怪我をした時や、飲み過ぎて仕事で失敗した時など、本人が「こんなことをしてたらアカン」と思うタイミングを外さず治療につなぐことです。
アルコール依存症の方は、みんなから駄目、駄目と言われ続けて自尊感情が損なわれていますが、困ったことが起こっているのは病気だからで、本人もなんとかしたいと思っています。だからこそ、患者さんに敬意を払い、せめて診察室では明るく笑ってお迎えしたいのです。この病気は回復できます。そのお手伝いを私たちがさせていただきます。困ったことがあれば、お気軽に相談してください。



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